キャラの印象的な台詞を考える
ストーリーの醍醐味といえるクライマックスで、主人公に、かっこよくてしびれる決め台詞を言わせるには?
言霊を宿すんですよ。あなたが感じていることをありのままに。
何が流行で、とってつけたような言葉でなく、あなたの素をそのままぶつけるんです。
まるで生きているかのように、本物かのように。
「自分の素?」
はい。ストーリーは作り話でしたよね?
作り話でも、嘘や、いかにも作られた台詞は、読者には響かないと思います。
たとえ嘘の話、作り話でも、主人公を通して作家の思いを伝えるのはキャラクターではなく、あなた自身。
主人公はあなたの代身ですから、クライマックスは素直に読者にぶつけられたらベストです。
それさえできれば、鮮やかで感動的なシーン演出できるでしょう。
例)最近、見た映画で『キングダム』で、印象に残った台詞をご紹介します。
(※まだ、ご覧になられていない方はネタバレ注意です)
王都奪還のために、主人公は戦いますが彼には夢があります。「俺はいつか天下の大将軍になる!」が口癖で、幾多の戦いをくぐりぬけます。
クライマックスの直前のシーン。
偽王室を制圧できた時に、めちゃめちゃ強くて、頭が切れるラスボス(王に仕えるはぐれ物の元大将軍)が現れます。
主人公は死闘を繰り広げますが、剣術ではまったく歯が立ちません。
すると、ラスボスは陰険な顔つきでこのように言います。
「ガキが夢語ってるんじゃねぇよ」「戦争を舐めるんじゃねー」「何が夢だ?そういう奴がろくな死に方しねぇんだよ」主人公は無様なかっこう。
血だらけでボロボロ。今にも、敵に殺されそうで、死にそう。(もう勝つ見込みがないと思わせる)心配して、叫ぶ仲間たち・・・
ここで、少し考察します。作者は主人公とは真逆の哲学も持っています。
つまり、
現実は簡単じゃねぇし。そんなに甘くねぇんだよ、ガキはすっこんでろ、的な。
そんな、排他的な心理を焼き付けるような台詞ですよね。
努力なんかしたって無駄なんだ、あきらめが肝心だ。もっと大人になれ。
賢く生きろ!愚か者めが、という逆論を持っており、心理に擦りこんできます。
さて。話は『キングダム』クライマックスへ戻しますよ。
主人公の心も、ペシャンコになりそうなシーンからです。
この葛藤と対立のシチュエーションから、次の展開はいかに?
主人公は、親友との約束を思い出します。
熱き友情の回想シーンで巻き返しが起こります。
ラスボスが、最後のとどめを刺そうとすると、主人公が剣で受け立ちをして蹴り飛ばします。
主人公は、息をきらしながらフラフラ。ダメージを負っているが、ジリジリとゆっくり立ち上がり、名演技&名セリフを放ちます。
「夢をもって何が悪ぃ・・・」
(逆光で前屈みになっている)
「夢があるから・・・・立ち上がれるんだろうが・・・」
「夢があるから・・・戦えるんだろうが!!!!!」
このビジュアルにしろ、台詞にしろ、すごく胸が熱くなりジーンと来て感動しました。
この言葉の重み説得力ありませんか?空想のお話なのに、ここまで突き動かされるのは何故でしょう?
もちろん、強敵に一発かましてやったアクションにもインパクトがありますが、それ以上に胸が熱くなります。
そうです。言霊が宿っているからなんですよ。
〝夢があるから何度も立ち上がれる〟という言葉はシンプル且つ本質的ですよね。
作家として書きたいテーマ(題材)とも言えるでしょう。
逆に〝愚か者はお前の方だ〟とも読み取れることもできますし、「ああ、やっぱり夢は、あきらめちゃダメだな」って、素直にうなづけますよね。
読者としては、そのようなテーマとして受け取り楽しませることもできます。
関連記事:テーマという障害
このように、かっこいい決め台詞の見せ方とは、常に自分の素(あなたが実感している理想の論理&逆論理)をぶつけてみてください。
きっと読者の心に刺さるにちがいありません。
作家さん自身が、〝こうだ!〟といえる哲学や人生観、強い信念を持っているからこそ、あのシーンを描けられるんだと思います。
あなたの創作を応援しています!
参考記事:強い主人公の作り方