漫画と小説の作りこみのちがい
そもそもこの記事って、誰のために書いているの?ってことです。
ぶちゃけ小説家のためか?漫画家のために書いているのか?
ストーリー作りの文章だから、小説家のため?と考えられるかもしれませんね。
答えは、両方です。
・・・元々ボクは小説家ではありません。
しっかりシナリオを書いてから漫画を作画するタイプですので、どちらかというと脚本に近いシナリオに毛を生やした文章が書けるだけなんですよ。
もっともプロと比べられたら、幼稚で誤字脱字も多いですし、しかも知っている単語表現なんかもかなり少ないと思います。美しい言い回しや、読みやすい地文テクニックもぜんぜんボクは浅いと思います。
ですから、ここでお伝えできることは限られているわけですが、ボクが、小説でも漫画でも一貫して伝えてきていることは、ストーリーづくりは、いきなり細かいディールから作りこむことより、まずは大枠を組んでしまうことです。
そこから先は、あなた自らの力で作品を完成させるのが基本的な内容になります。
いや。でもですね。
小説家Aさんの声
「どうやったらキャラクターを活かして面白いストーリーになるかもっと細かい表現手法を教えてくださいよ!」
漫画家Bさんの声
「もっと具体的にどういう場面で、どういう絵柄なら魅力的なキャラを表現できるかを教えてくださいよ!
・・・という無茶ぶりなお問い合わせがあった場合、対応できないんですよね。
それも、小説や漫画の細かいディティールの話になると、それぞれ個別に解説しないといけなくなることは確実です。
「それじゃ、漫画家のために書いている内容じゃなくなるやん!」
という方のために、漫画と小説、それぞれの作りこみの違いについての話もしてみたいと思います。
平たく言えば、〝夏の海岸沿い〟を小説で場面を描く場合
〝浜辺の塩〟の香りがするというト書きは、読者に香りイメージさせることはできますが、漫画では「浜辺の塩の香りが夏らしい〜」なんて、いちいちキャラクターにしゃべらすワケにはいきませんよね?
あるいは、ストーリー構成を考える際にも、表現は限られてきます。
例えば、〝父子家庭が激しい喧嘩をして最終的に仲直りする〟という大枠のストーリーがあります。ある日、主人公の女の子と、父親と口ゲンカとなり、その夜、父親は夜勤の仕事に出かけます。女の子は「家出してやる!」と決心はしたものの、窓辺で思い悩んでいる場面(シーン)があったとします。
小説では、女の子の内的葛藤を描きやすく、寂しさを理解してくれない悔しさなり、後ろめたさなり、思いを文章で膨らませてあげることはできますが、これを漫画にすると、マンションの窓辺で黙っている絵しか表現できません。
こうなった場合、小説版と漫画版を2つに分けて解説しないといけなくなります。小説で表現できても、漫画ではどうすべきでしょう?
ですので、ボクは、漫画家さんにも作画やネーム(ラフ画)の作業を進める前に、ある程度、完成に近いシナリオを準備することをオススメしているのです。
それはうまい文章(小説)を完成させることではありません。
漫画のストーリーを文章化させることで、小説のロジックにも活用でき、表現の幅を拡げるメリットがあるからです。
先ほどの父子家庭の話に戻しますね。
〝父親が夜勤に出かけて、女の子はマンションの窓辺で葛藤している〟場面から始めますよ。
女の子はリュックサックに水筒やカップ麺を詰め込んで、玄関のドアを半開きにした時、父親が定期券を忘れたらしく自宅に取りに帰ってきました。女の子は、驚いて咄嗟にリュックを隠します。父親から行き先を聞かれると、「家出をする!」という本音は言えず「ちょっとコンビニで買い物!」と嘘をつきます。
いかがでしょうか?
父親が反転して自宅に戻ってくるというストーリー展開というアイデアがあるかどうかで、女の子の内的葛藤を漫画でも小説でも表現できるわけです。
(もちろん、小説版でも父親が戻ってくるシーンを追加しても構いません)
おわかりでしょうか?
このような内的な葛藤を描く際に、ストーリー展開をビジュアライズ(視覚化)させることで、文章や作画による作劇を補強できるからなんです。
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