グロテスクはロマンスとつながっている
いつも創作お疲れ様です。
[fuki-r]ちょっとまってください!何やら物騒じゃ?[/fuki-r] [fuki-l]年末に炎上して、年始に読者減ってシャレになりませんよ?[/fuki-l]とんでもありません。いつも頑張っておられる作家さんに、ライトなグロテスクについて解説しようとかと思ってですね。
[fuki-r]グロテスクにライトあるん?[/fuki-r]あ、いえ、ですからボクは、そもそもグロテスクとは、ロマンスであるということを・・・
[fuki-l]いやいやいや、グロテスク、ロマンちゃうよ?[/fuki-l] [fuki-r]ふぅ・・・そろそろ喋らせてやるか・・・[/fuki-r]はい。知っておいて損をする記事ではございませんので、どうぞ安心してお読みくださいね。(^_^;)
さて。グロテスクとは、奇妙・奇怪・醜怪・不気味なものを指す形容詞なんですけど、ヨーロッパのイタリアに、グロッタという地名があるんですよ。
[fuki-r]グロッタ?[/fuki-r]はい。語源は、かの有名なローマ皇帝ネロが建設されたとされるドムス・アウレア宮殿の古代遺跡が発端なんです。
その遺跡は、16世紀あたりに焼け跡として発見され、イタリア語で洞窟や地下墓所のことをグロッタと呼ぶそうです。(ラテン語ではグロット)
[fuki-l]皇帝ネロってあのイエス・キリストと馴染み深い?[/fuki-l]そうそう。ほぼ、紀元頃(2000年前)に描かれた地下の装飾壁面が、人から植物へ、植物から魚へ、魚から動物へと連続して変化する異色な古代美術なんです。
・・・これがですね。
何やら怪しくて薄気味悪くて、かなり不気味だったことから、グロテスク装飾と呼ばれるようになって、建築や造形だけでなく、文学や思想表現の概念として成立していったそうなんですよ。
まぁ、このグロテスクという言葉には、時代によってどんどん進化してきた、ということだけでも頭の方隅に置いてくださればと。
で。グロと言えば、平たく言えば単純に、エグさじゃないでしょうか。
エグさと言えば自動的に〝犯罪〟や〝謎解き〟キーワードが連想しますが、常識では考えられないギョっとする異変(事件)が起こりました。果たしてどうなる・・・・的な。
例えば、殺戮者が、生まれた赤ちゃんをビニール袋にいれて、ゴミ清掃車につっこみ、主婦の口の中にナイフつっこんで、舌をえぐり出して、血しぶきブシャー!のスプラッター系とか。
[fuki-l]きゃあああああ!やっぱりだまらっしゃい!あんたの頭ん中、一本折れてない?[/fuki-l] [fuki-r]安心して読めっつったよな?あんた、グロフェチか?怒[/fuki-r]今の忘れてください、大変失礼しました。祈って浄化します。
結論から申し上げますと、
グロテスク表現とは読者に、恐怖を体感(震撼)させることに尽きると思います。
平たくいえば、あなたが、読者にゾクゾクさせられるかが鍵です。
キャラ設定では、立場的にかなり弱く、正体不明な敵や危険が迫っていることは確かなシチュエーションと、舞台設定(WHAT)の観点では、安全地帯と危険地帯が欠かせません。
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あの場所にいくと激ヤバ!、早く逃げなきゃ!ってテンパっている状況説明のうえに、恐怖の対象に残虐性と、凶暴性を植え付けます。
恐怖の対象とは、
例えば、
海岸の崖の下の奥に黒い塊のような物体(人物)が、血を吐きながら身をくねらせ、うごめいていたり、クリスマスの夜にだけ、この世のものとは思えないような得体の知れない変な声が、どんどん近づいてきて、その声を聞いた人は、朝になると目玉がくり抜かれるとか。今にも主人公に襲いかかろうとしており、難を逃れたが・・・・。
そのような恐怖の対象(人・物・事)が、今後どんな動きをするのか、まったく予測もつかない状況。
主人公にとって、脅威と危機(残酷な事態)が間近に迫っている、ということを読者に明確に知らしめることが大切です。
謎要素ばかりにフォーカスされていると、サスペンスやミステリーなどのサブジャンルカテゴリーに入りますが、グロテスクは読者の情動記憶を刺激する「追いかけっこ」&「かくれんぼ」のハラハラドキドキの冒険劇や、サバイバルなどには非常にマッチしてます。
『進撃の巨人』でお馴染み、〝巨人が人間を喰う〟。このフレーズ自体グロいですし、世界観がわかりやすいじゃないですか。
[fuki-l]進撃の巨人好きですねw[/fuki-l] [fuki-r]いや、初心者としては、血生臭いことを描くにはハードルが高くね?[/fuki-r]確かにそうですよね。
ボクが思うに、グロテスク表現というのは、物語全体としてではなく、あくまでストーリーパーツに過ぎませんので、悪役の残忍さや、世界観エグさといった、異色カラーを盛るだけでよいと思うんですよ。
事件が明るみになるに連れ、どのような犯罪を犯し、その結果どのように罰せられたのか、大衆がきちんと知らされるまでがミステリー・サスペンスで、それを助長させる役割がグロやエグさです。
複雑に考えず、「こうなったら・・・ああなる」といった単純な設定が大切です。
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例えば、
『天空のラピュタ』にも、ラスボスであるムスカがファイナルステージで豹変し、ラピュタの危険な科学兵器でゴリアテを蹂躙する場面がありますよね?
彼は最初は紳士でした。ですが、だんだん常識を逸脱した行動をとるようになり、核兵器を軍隊に披露した上、兵隊たちはロボット兵団によって無差別に海に投げ落とされます。ここに人間の心の闇やエグさがあります。
『もののけ姫』も、突撃するイノシシの群れに爆弾でバラバラに吹き飛ばしたり、シシ神(ダイダラボッチ)を火縄銃で首を跳ねて飛ばしてしまう暴力的なシーンなど。
これらも、考え方によっては結構グロいと思うのですよ。戦争やバトルものでは、何かしらバイオレンスシーンは、つきものです。
激しさ、荒さと言いましょうか、生命を脅かすシリアス系ストーリーでは、恐怖の対象の鏡として登場するのがハードボイルド的なストイックキャラです。(ラピュタのようにソフトなヒーローもあります)
ハードボイルドとは、冷徹非道な描写を含んでいる小説や漫画・映画(特に探偵物や殺し屋モノ)などを意味する形容詞となっていますが、アメリカの文豪、アーネスト・ヘミングウェイが、その作風の始祖となったと言われています。
ハードボイルドでなきゃ、そういう得体のしれない化け物に対峙することはできないし、その配役は間違ってもアホっぽかったり、キャピキャピキャラでは務まりません。
もし、ポップなキャラを登場させるなら、脇役としてモンスターの餌食となり、残忍な死に方を描写した方が緊張感を出せます。
ただし、使いすぎると作品のテイストがかなり変わりますので「ここぞ!」という時にだけ。
グロテスク表現と恐怖は密接に関わってきますが、その恐怖の前提には、自由が効かなくなる状況(デットゾーン)に至るまでのプロセスを以前の記事でご紹介しました。うまく活用していただいたらと思います。
関連記事:恐怖の公式
マスメディアは、大衆に恐怖を与えれば、消費行動に走りやすいのと、血が流れれば視聴率がアップすることを熟知してますので、主婦向けのミステリードラマって多いですよね。
人間(読者・視聴者)とは、自ら体験して、感じたい、味わってみたい、と潜在的に願う生き物です。
そこで、エグさを表現するなら、下記3つの要素を満たしてあげましょう。
①好奇心
②怖いもの見たさ
③過激さ
特に、若い女性読者は、グロ表現や恐怖というのは根強い人気があります。(そこのお嬢さん!)
なぜなら、ほら。女性って男みたいに腕力ないっしょ?豊かで安心・安全な暮らしが、脅威や危機によって犯されるものに注意を向ける傾向があるためなんです。
連続殺人鬼に、人が惹きつけられるのは、交通事故、列車事故、自然災害などから目が離せないのと等しく、犯罪や事故からは、身を守るためのヒントにもなりますしね。
犯罪を目の当たりにすると、「あの人は人殺しをしなければいけないほど追い詰められていたのだ」「そうなったのが自分ではなくてよかった」と感じ、逆に言えば、自分が被害者ではないことに安堵感を得ているからだと、犯罪心理学界の研究では述べられています。
悲惨なシーンや被害者への関心は、何がそうした非道に駆り立てられたのかを理解したいし、事態のプロセスや真相を知りたいんですね。
[fuki-l]でも、そんな知ってどうするのかしら?[/fuki-l]これはボクの持論ではございますが、生体学的に言えば、防衛本能の一種のなので、知って満足をしたいのですよ。
[fuki-r]残酷な犯罪シーンで満足?[/fuki-r]はい。そこで、個人的にはグロテスクシーンはロマンスとつながっていると言いたいんです。
[fuki-l]だから、それ、普通に却下ですよ!汗[/fuki-l]ロマンスとは、ラブコメディー要素もありますが、ダークストーリー(現実には起こりそうにない不思議で奇怪な物語)要素も含んでいるんですよ。
もちろん作家としては、倫理的・道徳的にもしっかり踏まえていることを作り話(フィクション)であることが前提ですよ?
読み手は、社会生活でハメをはずし人生がドロップアウトしたり、親に暴力したり、児童虐待されたり、反抗期さへなかった人もいて、そんな体験をしたくても、普段できませんし、ありえっこないじゃないですか。
[fuki-r]マジありえねー[/fuki-r]関連記事:悪という効果的な設定
だからこそですよ!
生々しい実体験がなければ、そうした感情を満足ができないからこそです。
平凡で退屈な日常から、極限状態になった人の気持ちに興味を持ったり、謎を解き明かしたい警察が、犯人を捕まえる前に、自分が真犯人を当ててしまおうと挑ませる要素だってあるじゃないですか。
安全な場所で、人間の闇の側面を垣間見せつつ、謎解きに必ず答えが明らかとなり、結末には気分が安らぐ・・・。そう。それはある意味、ロマンスを与えることにつながると思うんですよ。
同時に、そのグロさエグさを通して、極限状態に自分がどれだけ耐えられるかの限界を知りたいでしょうし、危険な状況が現実的にどんなものなのか?臨場感とエキサイティングな冒険が楽しめるワケですよ。
仮にゾクゾク感がショボかったにしても、ボクらエンタメ作家として、読者を非日常を味あわせ、時に恐怖満たす描写も意識することが大切なんじゃないかなと思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。あまり気に乗らないグロテスク表現の解説でしたけどいかがでしたでしょうか?ストーリーづくりの参考にしてみてください。
あなたの創作を応援しています。
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