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涙の公式

2021年9月23日

いつも創作お疲れ様です。

あなたの物語に、感情を激しく揺さぶらせ、読者を泣かせるコツについてご紹介します。

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物語は笑い(ギャグ)を与えることも大切ですが、喜劇の対極にある〝悲劇〟によって読者の涙を誘えれば、作品に大きな影響力を与えられると思います。

そこで、涙の公式をご紹介する前に、少しうんちくを語らせていただくと、あなたの物語で涙を流させるとは、読者にカタルシスを与えることです。

あまり聞きなれない〝カタルシス〟という言葉は、もともと古代ギリシアの哲人アリストテレスが演劇学用語として使われていました。

観客の心に〝怖れ〟と〝憐れみ〟の鬱血した感情を呼び起こし、一気に〝浄化〟に導くことをカタルシスが使われたそうです。現代でも〝悲劇〟の批評などにおいて、カタルシスという表現が使われています。

近代フランス詩学では、このカタルシス論が、悲劇の核として理解されるようになり、精神科医のフロイトは、悲惨な物語を観たり聞いたりして泣くことで、その効果をカタルシスと呼び、精神医療用語としても用いられています。

さて、小難しい話はこれくらいにしてですね。

平たくいえば、涙を誘い、感動を与える物語作品とは、自然にカタルシスを与える(泣けてくる)物語になります。

巷では〝エモる〟(エモーションの略)と呼ばれていますが、要は主人公が、めちゃめちゃ可愛そうだと同情させるだけに留まらず、キャラクターの言動で感情移入させることでカタルシスを与えられるわけです。

つまり、泣ける話とは、涙を誘う話ですが、方式があって、心理的我慢+感情放出をセットで考えます。

で。読者の感情を揺さぶる我慢とは、涙を誘うキャラを、簡単に泣かせてはいけないことが条件です。メソメソさせたらNGです。

あなたの作中に、このシーンは、読者に泣かせてみたい!涙の場面(シーン)があれば、是非、挑戦してみてください。

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早速、抑えるべき点ですが、

・実力はあっても(なくてもいい)とにかく立場が弱い
・大人の考えをもつ誠実な人柄(子供でも構わない)
・物語のオープニングから序盤にかけて事情や背景を抱えいる。
・人知れず苦労をしている

オープニングやセットアップパートで、キャラづくりが上記を満たしており、読者にもしっかり伝たわった上での話です。

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泣ける仕組みづくりとして、まずは必ずといっていいほど、キャラクター(特に主人公)に、まず好感度を上げることです。主役キャラが物事に対して冷めた見方をしていたり、根性が曲がりくねっているキャラでは、同情させるのはかなり難しいと思ってください。

好感度の高い主人公だからこそ読者は共感し、主人公の行く末やストーリーを追ってくれるのです。

その主人公を「可愛そう」と思わせたいなら、基本的に、素直に正しいことを実行しており、どんな相手であれ平等で優しく、真面目で純粋なキャラであることが好ましいでしょう。

にも関わらず、不純で冷たく、品層が欠ける意地悪なキャラ(悪役)から虐げられることで、その正当性を際立てさせます。

そして、最近「〇〇ガチャ」と呼ばれているような、自力じゃどうすることもできない不遇をもたらすことをセットします。そう。人生も、〝運〟というハンディーキャップがつきものですから。

例えば、
親、時代、地域、性別などの生まれ、担任の先生、クラス替え、席替え、異性との出会い、部活動の大会、入試、就職活動、職場の人事、災害、疫禍など、日常の至るところに不遇が潜んでいます。

まとめますと、読者を泣かせるには、

どんなに美しく良い行いをしてて、まじめに頑張っていても、ハンディーキャップがありすぎて結果がでない。シンデレラ姫のように正しく施し、まっするに生きているはずなのに、うまくいかない。

「頑張れ!」「負けるな!」と思わず叫びたくなるようなシチュエーションをつくり、そこに悪役を登場させ、意地悪をされて、苦しんで傷ついている様子を描きましょう。

読者を泣かせるには、主人公が、やむを得ない事情によって、周囲から認められず理解されないかわいそうな立場にセットアップすることです。

これで、読者は50%以上は、キャラクターに同情してくれます。

さて。ここから泣かせるには、重要な鉄則があります。
その不条理な現実に対して、主人公は文句や愚痴など不平不満を口にしないことなんです。相手の悪口をいいません。あってもモノローグだけでとどめておきましょう。

痛めつけられても、基本、主役本人は前向きの方がよいです。「これまで、どこかで幸運を得ていたかもしれないし、この先にもチャンスが待っているかもしれない」

たとえ、様々な不幸が襲いかかってきても、濡れ衣を着せられて、不幸な立場に落とされても、ひたむきに努力し、小さな一歩を前進できたことに感謝している様子を描いてください。

「きっと、あの先には道がある・・・」
ここで、ぐぐぐ・・と読者の心を引っ張ります。

そのような不利な立場であるにも関わらず、比較的近い友人からも誤解されたり、愛する人にも見放されざる得なくなったり、親から置き去りにされても、どう考えても叶うはずもない、たどりつけるはずもない状況の中でも、主人公は決してくじけず理想に胸に抱くのです。

今はうまく行かないけど、私は希望を信じる・・・
信じがたくても、信じたい・・・
ただ、信じる。私はいつまでも信じ続けたい・・・

つまり、読者は「そうだ!頑張れ!」という反応。ここまでくると、もはや主人公に対する憐れみのレベルにたどり着きます。

しかし、泣けるストーリーは、決してキャラに弱音を吐かせてはいけないですし、簡単に涙を見せてはいけません。

そのような下向きな姿勢に、特に女性読者は「こんないい人なのに、何とかしてあげたい」「〇〇できればいいのに・・・」という同情と目尻に熱いものがこみ上げてくるものです。

注意すべき点は、読者から「こうしたらいい」「ああしたらいい」と突っ込まれるバカキャラではいけませんよ。

あくまで、これまで智慧をしぼり最善の努力をしてきており、手を尽くしきって致し方ない事情にうなだる様子。それでも前を向いていることがポイントになります。

主役本人は、止む得ない事情を背景として、ほんのわずかな小さい前進を、喜びを得ながら、地道に踏み出そうとしていることを演出させてください。賢く優しく健気に。

・・・・で。ここからがやっと本番です。

更に、ある日突然、重苦しいアクシデントを起こさせます。
異変が起きます。ただえさえ苦しいのに不運に見舞れるのです。

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例えば、
主人公唯一の理解者や、愛する人の死に対するショック。
あるいは頼りにしていた先輩が為政者に左遷されたり、これまで守って助けてくれていた人が、止むを得ない事情で突如いなくなり、キャラの身に更に困難がふり掛かり状況が追い込まれるなど。

中でも、自然現象である誰かの〝死〟というのは、悲劇上では最もパワーのあるシチュエーションです。

環境や誰のせいにもできないですし、主人公は賢いですから、自分の運命を受け入れている大人であることがポイントです。

「あんまりだ!」と読者に思わせる刺激イベントは、苦しくて、いたたまれなくて、目を覆いたくなるほど耐え難い試練の中にあります。それでも主人公は歯を食いしばり前を向くわけです。

そこで、まだ!まだ主人公に涙を流してはいけません。簡単にくじけてさせてはいけないのです。辛くとも我慢させます。

ここで、〝対比〟という手法ですが、場面を切り替えてください。

主人公は、必死に努力して苦労しているのに、他のキャラは、パーティーを開いて楽しくごちそうや優雅に過ごしていていますが、かなり酷く映えさせることができます。

ここでのポイントは、主人公の苦しみの感情と、他のキャラの喜びの感情の落差(ギャップ)を描くことで、インパクトを与えることができます。

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パーティーでわちゃわちゃ楽しむキャラと、いたたまれなく苦しみを帯びているキャラが対比によって、読者に涙を誘います。

ここまでをまとめますと、

①キャラの好感度を上げる(不満を口にしない)
②異変パートによるショッキングな出来事が重なる
③周囲の対比によって、キャラの同情を誘う

ここまでくると、もう読者は涙ぐむかもしれないレベルですが、ストーリーで泣かせるにはまだまだです。

更には、周囲の反応〝浄化〟が起こり、これまでの誤解が溶けて、疎外されていた立場や敵意が緩和するのです。

あなたが、子供の頃、ちょっと思い出してほしいのですが、親からあるいは先生からひどく叱られて、後で「父さんが悪かった・・」とか「先生が言い過ぎた」「ごめん」と謝罪された時、目に涙がこみ上げてこなかったでしょうか?それは本当のあなたを理解した意味であり、わかってもらえなかった相手がはじめて受け入れられた瞬間というのは、誰もが感情がこみあげてくるものです。

つまり、主人公のつらい立場がジワリジワリと理解しはじめるシーンです。

周囲の人が、主人公の努力を目の当たりにして感動を覚えたり、自分の行いを改めようと感化されるシーン。読者は周囲のキャラに乗じて涙を流すかもしれません。

主人公を痛めつけて誤解していたキャラも反省し、連鎖反応で主役の深刻さに気づきはじめるのです。

ちなみに、そのサブキャラは、冷静でクール(物落ちしない)性格であるほど、浄化された時のリアクションは周囲の人間に影響を与える分、胸を打たせることができます。

ここまでくると、湿っぽい雰囲気があと押しして、涙が頬につたるレベルになります。ですが、まだ!まだ!主人公に泣かせてはいけません!

周囲から、理解を得られ同情されても、主人公はこれまでの非礼を許します。むしろ彼らを励まし、心の美しさ、優しさに読者に注目させられたなら、その情景を釘付けにさせることができます。

周囲の人はワンワンないても、主人公を涙を絶対に流してはいけません。まだまだです!更に、もっと心に揺さぶりをかけます。トリガー(引き)を描きます。

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主人公が、周囲を励ましなだめた後、ふと、溜息をつきますが、すでに、前を見る余力も残っていません。
もう、与え尽くしまくって心がカラカラ状態です。やることと言えば、もう泣くことしか残されていません。

ここで、主人公は、はじめてうっすら涙を見せます。

「ここまで、がんばってきたのに・・・やっぱりダメなのか・・・」と読者も70%もらい泣きします。
周囲いにいる脇役女性キャラであれば鼻水を出しながら大泣きさせましょう。

しかも、ここがラストのポイントです!

主人公が、涙を見せたと思いきや、その涙の動機に注目させましょう。

ここで〝憂い〟という手法で、いかに主役が心が深いかを演じるシーンになります。

ちょっとハイレベルになりますが、主人公が涙する理由です。

実は目に見えるアクシデントで涙しているのではなく、その事象よって、より根本的なものが失われることへの苦痛であり、さらには、自分よりもその先の未来への憂いで涙を流しているのです。

つまり、自分のために涙するのではなく、他者のために心から憂れている・・・。

もうね。女性キャラでしたら、聖女であり、男性キャラでしたら聖人レベルで、その思慮深さは敵対者も、思わず武器を捨て、身震いさせ感服するでしょう。

ここまでくれば号泣レベルであり、涙の絶頂と言えます。

〝憂い〟のポイントは、外的なことで涙を誘うのではなく、より本質的なことについて、涙を流させると、泣けてきますし、読者を共感から感情移入へ渦へ誘うことができます。

さて。ここまでの流れですと、
★第一段階
まじめ→認められない→かわいそう→同情→それでも信じる→好感度UP
★第二段階
アクシデントが起こる→涙を見せない→周りから心配される→逆に周りを気遣う
★第三段階
涙を流す→相手のことのために憂う

以上、涙させるポイントをざっくりまとめますと、
①正しく生きているにも関わらず、誰も認められない。
②感謝しながら一歩一歩地道に歩ませる。
③アクシデントが振りかかり同情させる。
④簡単に泣かせない、弱音を吐かせない。
⑤自分の苦しみより他者を励ます。
⑥外的な苦しみよりも本質的なものに対して涙を流す。

細かく言えば、まだまだ不足な点もあると思いますが、以上が現時点でボクが全力で発表できる、カタルシスを作る方法でした。

映画やミュージカルでは、バックミュージック(BGM)があるのでより臨場感を出せますし、漫画では絵があるので、画力次第では泣かせやすくなります。

小説の創作もプロットの構成を考えれば、上記にあげたシチュエーションをいかに抑えるかがポイントになると思います。

仮に「泣く」まではいかないとしても「共感」までは行くのではないかと思います。あ、ちなみにこのシーンのアイデアを出す最中に、悲しくてセンチメンタルなミュージックは聞かないでください。

無音で、泣けるシーンをイメージして、思わず涙ぐんだ方が本物ですから。

あなたの創作を応援しています。

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