あくの強いキャラはインパクトがある
以前、強い主人公の作り方でご紹介しましたように、あなたの生き方や考え方、あるいは生きる術や哲学があれば、決め台詞は、たやすく思い浮かびます、と申し上げました。
つまり、強い主人公とは
①あなたが独創性の高い哲学を所持している
②作家の考え方をキャラに反映させている。
③台詞と行動を一致させている。
あくが強いとは、独特のきつさ、しつこさ、とっつきにくさ。簡単に自分の考えを曲げたりしません。
そういう特性をもつキャラは、主人公として適していると思うんですよ。
つまり性格が濃すぎて、周囲から見えれば、身勝手なタイプです。
協調性に欠けており、仲間はずれにされやすいタイプは一長一短とも言えると思います。
主人公は、必ずしも善人でなくてもいいですし、悪人じゃないといけない訳でもありません。
もう、おわかりでしょうか?
作家であるあなたは、その類稀れな特性を活かし、ストーリーを構成させることができます。
改めて言いますが、あくの強いキャラクターのポイントとは、誰からも相手にされず、見向きもされず、煙違われ、世離れ人とか、周囲からバカにされてるような存在です。
その代わり、しっかりとした独自の考え方や信念を持つ者です。
だからこそイキイキと描けますし、主義&ニズムを持つキャラクターはインパクトが強く映えます。
もし強い主人公を描きたいのでしたら、そういうポイントを抑えておきたいですね。
あなたに哲学や考え方がなくったって大丈夫です。
歴史を動かした先人から生き方を学べばよいだけです。今からでも遅くはないですよ?気がついた時点からが、スタートだと思ってください。
そこで!
NHK大河ドラマの『麒麟が来る』の第14話「聖徳寺の会見」をご覧下さい。(歴史物・時代物があまり好きでないにしても、シナリオづくりの参考になるので必見です)
主人公(明智光秀)を取り巻く、美濃の斉藤道三と、尾張の織田信長(あくの強いキャラクターたち)を例にとってみます。
あなたも良くご存じかと思いますが、織田信長とは、難クセが強く〝尾張のうつけ者〟と呼ばれてました。ですが戦場で、はじめて鉄砲(当時、最新兵器)を使いこなした武将で、時代の変化を見据え行動した人物だと思います。(常識にとらわれないキャラですね)
そして、斉藤道三(美濃の城主)は敵方である織田勢と手を組み、今川(当時の最強軍事国家)をやっつけて天下取りを目論む〝マムシ〟と称され、各地の武将からも忌み嫌われている人物でした。
この悪巧み両名が、同盟を確かめ合うための舞台が「聖徳寺の会見」です。どっちも悪です。笑
この見事な駆け引きと思惑は、強烈な緊迫感を醸し出し、その一部始終を、主人公の明智光秀が見守ります。
はい。前置きが長くなりましたが早速、キャラクター(台詞)に注目してみましょう!
↓ ↓ ↓
信長「今日、私が山城の神様(道三)に目通りいたすのをもっとも喜んだのは帰蝶(道三の娘・信長の嫁)でございます。また、もっとも困り果てたのも帰蝶(嫁)でござりまする。」
道三「帰蝶が何を困り果てたのじゃ?」
信長「・・・私が、山城の神様(道三)に討ち取られてしまうのではと・・」(表情が変わる)
道三「今日率いて参った鉄砲の数は、いかほどじゃ?300は下るまい!それだけの備えをされた信長殿をどうやって討ち取れよう?」
信長「あれも帰蝶が山城の神様(道三)に侮られぬようにしくんだこと。今日の私は、帰蝶の手の上で踊る尾張一のたわけでございまする」
信長「両名ここへ!」(2名の家臣に挨拶させる)
「佐々成政でございます」
「前田利家でございます」
信長「この両名、尾張の小さな村から参った土豪の三男坊・四男坊・・・」
信長「・・・されど、戦となれば無類の働きとなし、一騎当千の強者でございます」
(目つきや表情、口調が変貌する)
信長「戦こうて・・・家をつくり・・・国をつくり・・・新しき世をつくる・・・その気構えだけで戦いまする!」(道三をにらみつける)
信長「父、信秀が、よく申しておりました。それをやった男が美濃にもおる」
信長「そういう男は手強いぞと・・・」
信長「これからは、戦も世の中もどんどん変わるでしょう」
信長「我らも変わらねば!」
(道三は、信長の有り様に感動する)
道三「・・・信長殿は、戯(たわけ)じゃが・・・」
道三「見事な戯(たわけ)じゃ・・・」
信長「それは褒め言葉でござりますか?」
(両者が笑いあう)
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勿論、脚本も然り、俳優さんの表情や音楽も奏でてますが、あくの強いキャラクター同士が交わした対話は、色濃くコントラストが強いです。
ストーリーにインパクトを与えることができるのはキャラクターの演出にかかっていますし、台詞にも注力を注いでみてください。
この場面を文章なり漫画なり表現していくためのポイントとしては、まず〝あくが強い〟という言葉は、一見マイナス的なイメージとして捉るのではなく、ストーリーの盛り上がらせられる要素だとお考えください。
このようなあくの強いキャラは、読者に強いインパクトを残せると思います。主人公を引き立たせたいのでしたら、このようなサブストーリーの働きや、色濃いキャラクターの登場は欠かせません。
あなたも、あくの強いキャラを描きたくなったら、是非参考にしてみてくださいね。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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