悪役は〝悪〟ではなく人間の弱さの演出

今日は、初心者向けストーリー作りのコツとして、悪役の作り方について考えてみたいと思います。
「悪キャラを登場させたいけど、悪役にイマイチ迫力がない」とか
「そもそも、悪役が嫌いだし、情がいかならいから描くことが難しい」とか
「もう少し、行動にヒネリが欲しい」とか・・・
まぁ、いろいろあると思いますが、悪役は物語を盛り上げるための引き立て役にすぎません。これは小説を書くためのストーリー構成の観点でも重要なポイントです。
つまり、主人公の目的を邪魔したり妨害するキャラクターで抵抗勢力・反対勢力の側に属しています。
何より読者が「こいつ嫌だなぁ」「クズだなぁ」と苛つかせるキャラクターなんですよ。悪役づくりの上手さは、読者に不快感を与えてナンボです。
思わず舌打ちしたくなるキャラを登場させないとやっぱり物語は面白くなりません。
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では、早速、不快感てんこ盛りのキャラづくりをご紹介しますね。
ポイントはまず、あなたが悪役の気持ちを理解することがスタートです。
主人公を攻撃するのは暴力だけとは限りません。特に心を傷つける言葉が必要です。
主人公を攻撃するキャラ(悪役)は、基本的に、主人公の考え方を全面否定してますので、主人公のやっていること、言っていることに対して何から何まで腹を立てているんです。
主人公は、健気に夢と希望をもってがんばろう!と周りを奮い立たせて必死の努力をしているにも関わらず、悪役は「くだらねぇ」「ケツが青い」「無理無理」「意味がねぇ」と足をひっぱります。
なぜ、テンションを下げさせて攻撃するのかというと、その姿をみてうらやましいからです。嫉妬しているから腹を立てるわけなんです。自分のないものを持っているから攻撃するんですよ。つっつきたくなるんです。
というのは、
あなたも、目の前で輝いている人、みんなから熱い目でたくさん注目が集まった時、うらやましくて、惨めな気持ちになったことはありませんでしたか?
更に、その人から正義を振りかざされたような目にあったりしませんでしたか?(イケメンで頭が良くてスポーツもできるクラスの学級員とか・・・)
あなたが弱い立場であれば、力や正論で行使された際に必ず警戒するはずです。悪役の心は〝自分の価値が下がった〟と錯覚しているんですよ。主人公を見て、恐怖(恐れ)を感じているんです。
(奴さえいなければ・・・)
だから、目の前にいるだけで気に食わないし、自分の存在が脅かされるのではないかとビクビクしているんです。目障りだから早くつぶしたいんです。
だから主人公が成功すればするほど腹が立ちます。幸せになってほしくないんです。目的を果たされると自分が困るから攻撃をしかけます。
それが人間の弱さの本質であり、良いこと、善行だとわかってても、簡単に認めるわけにはいかないし、祝福できません〝願わくば失敗すりゃいいのに〟とまで考え、手当たり次第抵抗するわけです。
主人公がゴール間近になれば、手段を選ばず汚い手を使って追い込もうとします。
じゃぁ、どんな風に?
主人公を弱らせるんです。その攻撃方法は、性格によって異なります。以前、キャラクターの性格4種で紹介しましたが、ここでは端折ります。
平たくいえば、人類には、大きく4種類の性格があると言われていますが、共通していえることは、水かけ論の攻撃になります。
水差し言葉を使わせる
〝水差し言葉〟にはどんな手口(行動)があるのかというと、主人公が好調な時を狙って、しらじらしく話題を変えます。
例えば、
主人公が、達成感を味わってたり喜んでいる時、「ねぇねぇねぇ、ところでさぁ、〇〇のことなんだけど」など。
急に話をそらしてモチベーション
を下げさせて、好調から不調に追い落とす手口です。また、高度なテクニックを持つ悪役キャラは、主人公の盲点をついて不安を煽ります。こうした台詞回しは、脚本家志望のための創作テクニックとしても欠かせません。
例えば、
「おっしゃることはわかりますが、〇〇については?」「なるほど・・・ということは、〇〇がなきゃあまり意味がないですね・・・」など。
上品な言葉を使って、主人公に下品にふっかけます。(要するにつっこみを入れるいやらしいキャラです)嫌味を言って弱体化させ、心の中で喜びます。
更に、巧妙な悪役になると、、
「〇〇については?」「なるほど・・・ということは、〇〇がなきゃあまり意味がない気がしますねぇ。あらら。すみません、あくまで私の考えなんでお気になさらずに・・・せっかくの祝いの場を邪魔して申し訳ございませんでした」など。
微笑みながら皮肉めいたことを言って雰囲気を台無しにしてその場を立ち去ります。
これは毒舌爆弾ですね。あきらかに敵意むき出しの強力な精神攻撃です。
また『半沢直樹2』のラスボス(箕部幹事長)の有名なセリフ
「はぁ?最近、耳が遠くてねぇ・・・・」
自分の意向に合わない相手を寄せつけず、自分の都合を強引に押し付ける皮肉たっぷりの精神攻撃は、あたかも高齢者を大切しなきゃだめでしょう?という人道を履き違えた悪徳台詞は、見事なクズっぷりです。
巧妙な悪役とは、あえて相手の感情を逆なでする効果を狙っています。主人公をひるませることが目的があきらかなので、かなりの嫌悪感を読者に抱かせることができます。
このように、読者がイラつかせるようなキャラを作ることができれば、主人公の存在感が大きく引き上がって輝きます。そのためにはキャラクター設定の重要性と方法をあらかじめ整理しておくことが鍵です。
主人公が輝く物語はインパクトがあります。ですから主人公に感情移入させるには、悪態をつく悪役の存在が欠かすことができません。
つまり、悪役づくりが、結末の期待値(セントラルクエスチョン)を向上させ、ストーリーを面白く盛り上がらせるのです。
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注意するべきポイントは、あなたが悪役に同情しないことです。
最悪の場合、作家本人が悪役キャラクターに恋をしてしまうんですよ(笑)これだけは絶対気をつけましょう。
あくまで物語の導線は主人公のゴールにあります。下手をすれば、サブストーリーが肥大化するリスクがあります。
「悪役がかわいそうだから」「親近感がわくから」「こいつをもっと引き立たせたい」など考えていたら、読者は、あなたの邪(よこしまな)想いや欲が反映して違和感を感じさせてしまうでしょう。
一番厄介なのは物語が長引かせる(長期化)危険があることだけは忘れないでくださいね。悪役づくりは、〝読者をいらただせる〟シーンを作ることが目的なんですから。
横槍を入れる
悪役は、悪い考えをもつキャラだけじゃありません。悪役本人が言っていることに責任をもっていなかったり、感じていなかったり、その自覚ないことがほとんどです。
苛立たせるキャラの作り方、ムカつくキャラの作り方は、主人公の目的に対して横槍りを投げさせることです。
横槍を入れるキャラは、関係の無い第3者が割り込んで主人公のやっていることにいちいち口をはさむのです。
しかも、本人は偉そうにして、かっこつけているんです。良いことをしていると信じているし、主人公よりも自分の方が強い!魅力がある!と主張します。可愛い子、自分が好きな子などに認めてもらいたいんです。
わかりきったことをクドクド説明したり、自己主張を延々と振る舞います。頼んでもいないのに、別の話をし始めて状況を混乱させます。ターニングポイントのシーンや大切な場面に登場させると「よりによってこんな時に・・・」と読者がムカついてくれます。
主人公やヒロインが、つっこみを入れるとダダをこね偏屈を抜かしたり、ヒステリックになり、どんどん態度が悪化します。厄介で手がおえません。(ほんとクズだな)
いかがでしょうか?読者に不快感を与えられますよね?
そして、トントン拍子で物事が運んでいたにも関わらず、主人公よりも立場の上(親・上司・権力者など)が覆し、また一から考えざる得ない、やり直しをせざる得ない状況に追い込まれる。ブチ!!(# ゚皿゚)ムキーッ!!
「このキャラ!超ムカつく!つーか人間のクズだなマジで」と読者に感動を与えます。(別の意味で)
このような悪役は、主人公の目的を邪魔するばかりでなく、逆に物語や主人公を引き立たせてくれますし、読者が感情移入しやすいのです。
水かけ論が幼稚であればギャグメーカーになります。ギャグメーカーとは、物語全体の雰囲気を盛り上がらせる残念な脇役です。
関連記事:脇役キャラクターをうまく使いこなす
逆に水かけ論のレベルが主人公の対等の反論(攻撃)であれば、物語のキーパーソンとなる可能性もありますし、きっと読者は目が離せなくなるでしょう。
ただしレベルの高い悪役は悪役ではなくなっているはずです。もはやメインキャラの仲間入りです。
つまり、主人公と議論を交わしているうちに、主人公の主張を認めざる得なくなるんです。そして嫉妬をしているんです。うらやましくて腹が立つから攻撃をしかけるのです。
そうなると、その悪役は、もうひとりの主人公の言い分、いわば物語のメッセンジャー化するので重要な登場人物になります。
関連記事:登場人物の増やし方と連結方法
はい。話をもどしますが、悪役とは、主人公の目的と理想をぶち壊すことを目論む邪魔なキャラです。
もし、主人公の目的が恋人とゴールインするとなれば、悪役はその関係を引き裂くように攻撃をします。
ですので、悪役づくりは、主人公の目的(ゴール)が決まっていないと、作ることは困難です。
創作前の3つの決め事の中にある②何故を決めておかなければ、作品の面白さは半減してしまうと思います。
関連記事:創作前の3つの決め事
ここからは、創作メンタルについて少しお話します。
ストーリーづくりの要、〝敵役〟が描けるようになると、あなたの周囲にいる人間関係が改善される、とは言い切れませんが、少しだけ心に余裕ができると思います。
何故なら、ストレスの原因のほとんどが〝人間関係〟から来るものだからです。
創作をするにはメンタルが必要ですが、意地になってメンタルを強くさせなくてもいいんですよ。メンタルを維持さえできれば。
そのコツは周囲の人たちと、何とかコミュニケーションをとってやり過ごすことです。
もし、周囲が荒れているのでしたら、作品の創作ばかりに熱中するだけでなく、身近にいる人(家族や友人や職場の人)へ気を配り、心地よく作品づくりができる環境をつくっていきましょう。(地道に・・・)
生活の中心が自分の創作ばかりになると、周囲の人をないがしろにしてしまいがちです。かえってストレスになり、パフォーマンスの低下につながります。
あなたの人間関係は、あなたが登場させるキャラクターの言動と反映されます。それは協力的なキャラだけでなく、非協力的(反対)キャラからもヒントが得られるチャンスですよ。
あなたの創作を応援しています。
元の記事をどうぞ:悪役はストーリーを盛り上げる

【解説】悪役って、ひょっとして“力が強いだけ”の単なる敵キャラですか?本記事ではそんな既成概念を覆します!実は真に恐ろしいのは、血なまぐさい暴力ではなく、他人の心を静かに破壊する“静かなる害悪”。そんな“見えない残酷”を描き出す創作テクニックを解説!読み進めるうちに「あ、自分にもあるかも…」とハッとする瞬間が。初心者でもすっと理解できるよう、脚本家志望にも刺さるヒント満載。気になったらCHECK!