エロティズムよりチラリズム
いつも創作お疲れ様です。今回は、小説・漫画創作における表現でエロとチラリズムについてご紹介しようと思います。
本稿の結論は、エロティズムとは性交を目的とする描写表現、チラリズムとはエロティズムに行き着くまでの描写表現
・・・とボクは定義しております。
もし、あなたが「けしからん!エロなど邪道だ!」と感じるのであれば、この記事は、ばっさりスルーしてください。
個人的に言えばですね、エロ小説・エロ漫画は恥ずかしくて描けないですね・・・。正直、挑戦する勇気もないんですよ。
でも、〝無難な形で描けるくらいがいいだろうなぁ〟という意欲は持っている方ですね。いわばチラリズムってやつです。
[fuki-r]チラリズム?[/fuki-r]はい。例えば、
ビジュアル的に言えば、『ワンピース』でもナミに限らず女子の胸がサイズ大きいですよね。やはり、少年誌だったからこそメガヒットした一つの理由かと思います。
『風の谷のナウシカ』では、トルメキアの船団がペジテ襲撃された時、とっさに相棒テトをナウシカの胸の谷間へ隠したり、『魔女の宅急便』では、ヒロインのトンボとデートを約束をしていたが、宅急便の仕事途中に嵐に襲われ、キキがびしょ濡れになり、翌日風邪を引いた時、すっぽんぽんでベットで寝ていたり。(若干エロとはわかりずらいけれど)
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あなたの物語作品にも、ちょっとした性的な刺激(ピリ辛味)を上手に身につけると、キャラの存在感や臨場感が上がるのではないかと思ってます。
ストーリー作りのエロ表現は、色気や甘美さという位置づけで、キャラづくりの一つとボクは考えてます。
ちょっとした色っぽさや、その色っぽさに緊張する〝人間臭さ〟のキャラづくりが、ストーリーを盛り上がらせ、ストーリーがキャラの魅力を相乗効果で際立たせられるかと思います。
特に、恋愛ドラマの男女愛の引き(トリガー)を、このチラリズムで活用されるとよいでしょう。
[fuki-l]んー。一応読んでおこうかな・・・[/fuki-l]さて。エロティズムという言葉の語源ですが、ギリシア神話に登場する〝エロース(愛の神)〟の名前から来ています。男女愛の行き先には〝種の保存〟という共通目的がありますよね。生命を宿すには愛が欠かせないですし、そういう意味では神聖な意味があるのかもしれません。
キリスト教では〝エロス〟と呼ばれ、性的な欲望を切望する異性への愛(自己中の愛)であり禁忌として捉えられますが、逆に古代ギリシア哲学では、セクシュアリティ問題(性のあり方)を人間がどのように理解しているかについて冷静に分析しています。
まぁ、エロス神とは、結局のところ性的欲望を表象する原始的な概念と、繁殖行為であることはまちがいないんですけどね。
かつて三島由紀夫さんのベストセラー代表作『潮騒』では、伊勢湾に浮かぶ歌島を舞台にした男女恋愛物語ですが、本編の中盤に、主人公の漁夫とヒロインの海女が、古い建物(監的哨跡)の中で、とある事情によって、裸になり、抱き合うちょっとエロティックなシーンがあります。
もともとは古代ギリシア、エーゲ海のレスボス島を舞台とする恋愛物語『ダニフスとクロエー』から着想を得たものだと考えられており、三島由紀夫さんはこの作品でエロティズムを本格的に研究されたそうです。
ヌードという曲線美(モチーフ)と対極的な背景(ジメジメとした荒々しく逃れられない閉鎖された空間やバックグラウンド)で、男は心理的に拘束し、女がじわりじわりと朽ちていく過程。女は男に気を引きながら〝決して相手のものにならない〟と拒みつつも許し与えてしまう女の不安定を表現し、その身に出産という形で種を宿らされ、自分の身が疎外されてしまうような前触れなどです。
もちろん『潮騒』では性行為はギリで描かれないのです。そう。ちょっと見れそうで見れない危なかっしさがあり、結局、ヒロインは拒否(お預け)し、主人公も彼女の意志を尊重するのでした。
巷の作品では男女の性交を、花瓶に添えてある花びらをポトリって落としたり、満月が映し出されたり、隠喩表現されてるじゃないですか。あれって、次の展開の期待値を上げる〝チラリズム〟だと思うんですよね。
ボクがまだ小学4~5年くらいの時、両親がドラマを見てて、セックスシーンがはじまったんです。ボクはHするところが見たい!と思いましたが、チャンネルをかえられちゃったんですよ。
[fuki-l]返って興奮させてないですか?[/fuki-l]はい。「お前が見るのはまだ早い!」とガン見されたというか、いや単に親が恥ずかしかっただけかもしれませんw
エロティズムは、快楽を目的とする生殖行為が確かに強いですし、むしろそれが主な目的になっていると言えなくもありません。
人は誰しも気高い〝愛〟と〝美〟を求めておりますが、その先にあるのが〝生殖行為〟であり、男が〝狼〟、女が〝子羊〟と比喩されるように、肉体を中心とする愛では、宗教的に動物的な地位に落ちてしまうためでしょうか。
もっとも、行き過ぎたエロ描写は、極めてポルノアダルトのスレスレの領域で、嫌がる相手を黙らせ肉体を〝魂〟としてではなく、安易に〝物〟として扱う盗人行為で、快楽と官能をむさぼり走らせ、不義なる喜びを得ようとすることから、もやは〝美〟や〝アート〟としてではなく、〝いやらしい〟〝毛皮らしい〟など、とくにライトな世論はいかがわしさとして映るのかもしれません。
ボクが高校の頃、保険体育の射精と受精の授業がありました。勃起とか夢精とかアレの話です。もちろん女子らは別々の教室でした。
先生が「お前ら、もう知ってるだろ?な?な?」とニヤニヤ笑うと、それに乗じてほとんどの男子らがヘラヘラと不潔な笑いが呼び起こりましたね。当時のボクは「なんかこの雰囲気、キモいし恥ずかしいなー」という違和感を覚えています。
[fuki-r]まぁ発情期の野郎どもはそんなもんですよ・・[/fuki-r]ですよねー、でも、どうせ性教育をするなら、具体的な絵でなくてもいいから、ご経験された男女の愛の本質について教えてもらいたかったですね。
どうもエロティズムは性的異常(嗜好)や、わいせつ行為と無意識に連想しやすく〝悪役〟として作劇しても読者は快く思わないのはグロティスク表現に近いからかもしれません。人間の本能がむき出しが見え隠れされ、いずれにしても、エロやグロって、やっぱり俗っぽい響きですし、取り扱いに注意が必要だと思います。
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もしあなたが作中でギリギリラインを扱うなら、世論のタブーを認識しつつ、あなたの価値観や好みのバランス感覚にもよると思いますが、愛の秩序の蹂躙、生命の尊厳を壊すいった一線を踏み越えさえしなければ、エロ表現はストーリーの装飾的な部分において、キャラ作りの大きな要の武器となるでしょう。
つまり、ボクが思うに、性愛のプロセスすべてを描く必要はないし、あえて描かずにボヤかすからこそ、読者に想像させエロ表現ができると考えています。
ボクはそれらを〝チラリズム〟の表現としています。
さて。そろそろ本題です。
キャラクターのチラリズムが現れるメカニズムですが、フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユのエロティズム論を参考に、小説・漫画用のキャラづくりにアレンジしたものをご紹介します。
ずばり、
男女異なる身体に対する好奇心(下心)と魅惑の過程をゆっくり表現することに尽きるかと思います。
実は〝チラリズム〟という造語が流布されたのは、戦後日本だそうです。東京の浅草の女剣戟(劇)の演劇女優の浅香光代さんによる女剣劇ブームがきっかけで、女剣士が剣をふるう時、裾がチラッ、チラッめくれて、小刻みに内ももが見え隠れします。
[fuki-r]んー色っぽい・・・[/fuki-r]当時、ストリップショー(着物を脱ぎ露骨に裸を見せる演劇)の全盛で、それに代わって注目されはじめたのがチラリズム。
そう。見えそうで見えない、この引き(トリガー)こそチラリズムの本質だとボクは考えています。
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では早速、どのように描けば読者に、チラリズムを感じさせられるかについて解説しますね。
[fuki-l]ちょちょちょっ!ヤバくないですか?[/fuki-l]いえ、キャラづくりには、結構大切なことなので、この段階でキモいと感じたらこの記事はスルーしてくださいね。
特にあなたの物語作品に〝恋愛要素〟があり、ハッピーエンドの場合に限りますが、男性キャラも女性キャラも、将来的に〝アイウォンチュー〟(あなたとHがしたい)の欲望を間接的(意識的)に描くことが条件になります。
[fuki-r]て、手に汗が・・・[/fuki-r]男性の強い性欲(男性優位主義)のその逆、つまり女性側サイドはわかりにくいかもしれません。ですから、女性がどのように満たしているかについても、ある程度認識しておいた方がよいでしょう。
女性が男性のような性欲は少ないのはご存知かと思いますが、惚れた男性に恥ずかしがりながら自ら身をさらす行為が、女性読者をムラムラさせるチラリズムになります。
男性からしてみたら、え?何?それってエロイの?と思うかもしれませんが、個人差はあるかもしれないけど、女性自ら色気を露わにしたいという欲情ともいえるわけでして、一言で言えば〝見られたくない〟だけど〝魅せたい〟〝接近してほしい〟という領域(積極性と消極性)が混在し、ゴールに辿り着くまでの絶妙なプロセスやトキメキ感を楽しんでいるのです。
例えば、
シャワーを浴びるために、女性が服を脱ぎ全裸になる時、願わくば好きな彼の視線のもとへ差し出す欲情は、男性キャラ(男性読者)にとって甘美であり色気が出るものです。
女性が、化粧によって美を配慮し、惚れた男性から優しく愛撫されたい願望は、肉体的というより、愛する男を我が物にする独占欲や精神的追求の方が強く、ある意味男性よりも女性の方がHだと言える由縁なのかもしれません
欲情を抱く女性キャラというのは、男性にとって一人の人格者〝美〟として映ると同時に、エロス的な魅力としても現れます。
すなわち、男性の理性を狂わせる魅惑を彷彿させるギリギリの駆け引きや、強い精神をもつ男性ほど、脆弱化させた時に感じるエクスタタシーなのかもしれません。
[fuki-l]きゃああああああああああああああああああ!!!!エロいいいいいいいいいい!![/fuki-l]とりわけ清純な女性は普段、むやみ肌を出すことは自制(禁止)してるため、エロティックスイッチが入ると、時々大胆に変身を遂げることもあります。禁止というのは見ちゃダメ!触っちゃダメ!という拒否行為です。
この魅惑は男性は耐え難いのです。しかし、草食系男子のキャラは「はい。すみません!」と口ではいいながらも美しき聖域を侵犯したくなるものですし、同じく女性キャラも好きな男性だけには侵犯してほしいという願望があります。
つまり、磁石のように両者の思惑をリズミカルに引っぱりあいつつ、ギリギリの所でお預け状態にさせることが、エロ表現の技術を磨くコツになります。
これによって、読者が、あなたの女性キャラも男性キャラの虜となり、あなたもプチエロマスターになれるはずです(そんな称号はどうでもよいですが)
はて?さっきからボクは何を力説しているのでしょうか?
[fuki-r]マジでヤベえぇ・・・[/fuki-r] [fuki-l]そろそろ締めてくださいよ[/fuki-l]いえ、まだまだこれからです。更には、トラップシチュエーションを仕掛けることができれば、チラリズムの完成度がUPします。
[fuki-r]トラップシチュエーション?[/fuki-r]どういうことかと言えば、偶発的に生じた出来事で、女性キャラの身体細部をズームインさせることです。代表的な例で言えば、パンツがチラリと見える〝パンチラ〟です。
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この手法は、漫画表現によく使われていますが、小説においてもブラジャーの紐が見えてしまったり、自転車のペダルを踏む瞬間スカートがヒラリとなびくなど、工夫次第では色っぽさを読者に訴求できます。
また、男女二人きりになるワケありシチュエーションを敷き、海水浴場やプール、温泉宿、野宿でトイレ、閉鎖空間を設定し、ちょっとしたトラップにひっかかり、思いがけないトラブルでノーパンになったり、着る物を盗難されて、Yシャツやタオルの下はすっぽんぽんなどなど。
男性キャラは見たい、女性キャラは魅せたい、ということを意識して描いてみてください。きっと読者に胸の谷間の色気さと甘美さ、そしてキャラの魅惑をイキイキと描かれることでしょう!!
・・・・。
だんだん頭がのぼせてきました。この辺でやめにしておきます。(あれ?いつの間にか、ツッコミ役がいなくなりましたな・・・)
[fuki-r]あ、途中からスルーしてました[/fuki-r] [fuki-l]あなたが勝手に盛り上がってたのでツッコみずらいです・・・[/fuki-l]お気遣いいただきありがとうございます。
最後に〝萌え〟表現について解説しますね。
[fuki-l]まだ、あるの?(汗)[/fuki-l]はい。〝萌え〟はエロティズムとは微妙に異なるかと思います。
なぜなら〝萌え〟は性的な意味合いというより、ヒロインが恥ずかしがる様子や女子らしさを描く表現だからです。おそらくは、性的なエロと結びつける〝萌え〟は、読者からは迎えられにくいでしょう。
萌えとエロをごっちゃにしやすいので、注意が必要です。
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以上、冒頭でも申し上げましたが、ハードルが高く自分の作風とマッチしていなかったら、無理をしてまでチラリズムを導入する必要はございません。
もし、男女恋愛ドラマでハラハラドキドキ要素を取り入れてみたい場合には、先に挙げたような内容を意識して創作を楽しみ役立てていただけたら幸いです。
恥ずかしい思いをしながらも、最後までお読みいただきありがとうございました。
あなたの創作を応援しています。(何の応援かわからんけど)
次回は、恋愛ドラマの法則について綴りたいと思います。お楽しみ!
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