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『電車男』(TVドラマ)の物語の解剖分析④

2023年5月30日

今回は『電車男(TVドラマ)』(2005年)のストーリー分析シリーズを、アップしてみました!筆者の趣味ですが、お付き合いいただけたら嬉しいです。

さて。大変懐かしいのですが、電車男”は2004年3月、インターネットの巨大掲示板(2ちゃんねる)で生まれた実話です。

【注意】まだ観ていなければ、ネタバレになりますので、申し訳ないですがご視聴していただいてから、この記事をお読みくださいね。

ドラマ電車男(DVD)

もし観ていなかったら、DVDレンタルで視聴(11話)をおすすめします。なんとアマプラやネトフィリなどの動画配信サービスでは配信されていないんですよ。残念ながら再放送もありません。どうしてぇ??∑(゚д゚lll) と叫びたいです。

いつか、1話から無料で視聴できる日がきますように!(>ㅅ<)

この純愛物語は、電車の中で酔っ払いに絡まれている女性を、ヲタク青年が助けたことから生まれました。その事が多くのブログでも紹介され、2004年11月には「電車男」(新潮社)として書籍化!そして、フジテレビがテレビドラマ化すると、最高で25.5%という視聴率を叩き出しました!

という訳で、ストーリーの骨組みの作りの参考にしていただけたら嬉しいです。

フジテレビ『電車男』(TVドラマ)予告編

着想(アイデア)

ヲタク+ラブコメ+ネット掲示板(ネット住人)

実話がもとになっているため、そもそも着想とはいえませんが、この作品の大きな特徴として言えることは、ネット上のヲタクたちから叱咤激励を受けて、主人公が恋愛成就を果たす、ということでしょう。

最近のドラマでは、ネットを取り上げるのが当たり前になっていますが、この作品は、ドラマでネットを取り上げたというより、ネットとドラマが融合しているところです。

結末は「二人は恋人になる」ということが、実話によって周知されているため、オープニングでは、外資系企業に務めるOL(ヒロイン)と、アキバヲタク(主人公)が、同じ夜の花火をみつめまるシーンからスタートします。

「このアンバランスで相容れない二人はどうやって恋仲になるんだろう・・・」というセントラルクエスチョンが一目瞭然でわかります。

関連記事:セントラルクエスチョンの考え方

スリーベース

①誰が?:山田剛司(主人公)
②なぜ?:ヲタクであることをカミングアウトして
③どのように?:幾多の試練を乗り越え、青山沙織(ヒロイン)へ告白する

①誰?

主人公の山田剛司(以下剛司)は、アニメ・ゲームだけでなくパソコンに詳しいネットユーザーです。〝彼女いない歴〟という言葉も相まって、恋愛にはまったく縁がありません。それでも七夕の短冊には「恋がしたい」と密かに綴る、純情な青年です。

②なぜ?

なぜ?というのは、事情や背景です。剛司がヲタクであることにWHAT問題があります。そう。バレたらゲームオーバーです。フラれてもゲームオーバー。現実的にヒロインの青山沙織(以下沙織)と釣り合っていない状況を作り出すのが主人公の目的になります。

③どのように

ネット住人から励まされ、主人公が告白をする。ラストでは、沙織が、剛司がこれまでに書き込んできた掲示板を読み、どれほど想っていたのかを初めて知ります。クライマックスでは、二人が再び秘密の場所で出会い、告白しあいます。

このブログでは、プロットづくりの根っ子になる創作前の3つの要素(要約文)を決めてから作品に着手することをおすすめしています。よかったら、こちらの記事もお読みくださいね。

関連記事:創作前の3つの決め事

トライアルアンドエラーパート

トライアルアンドエラーパートとは、起承転結の内、「承」の部分です。『電車男』の場合、このパートが盛りだくさんで見応えがあります。

通常、主人公自身がトライしてエラーが起こりどんどん成長していくんですが、この作品では、主人公があまりに軟弱なため、ネット住人たちが強力な助っ人となって、試行錯誤して、主人公を決意に変えさせていきます。

いつしかネット住人たちとの絆も深まっていき、やがて沙織への告白(ゴール)というクライマックスへ迎っていきます。

そこにたどり着くまでは、笑いあり涙ありの、ハラハラドキドキもどかしいシーンが満載です。

恋愛成就することがゴールですから、この結末はしっかりと抑えて、各章ごとに山場を作っていくとよいでしょう。

関連記事:トライアルアンドエラーパート

クライマックス

クライマックスは、2回の構成になっています。破局の大ピンチが2回きます。

一つは、沙織への告白とコミケと天秤にかけてしまい、自分がヲタクであることがばれてしまうこと。それでも、ネット住人からのフォローがあり、自分がヲタクであることをカミングアウトして仲直りをします。

関連記事:ハラハラドキドキの出し方

二つ目が、ファイナルステージ。沙織は、インターネット掲示板「Aちゃんねる」の存在を悪い意味で知ってしまい、剛司は破局の大ピンチに見舞われます。

しかし、あの日から(酔っ払いから助けてもらったお礼のティーカップ(エルメス)をもらい、そのお礼の電話をすることからはじまり、食事に誘ったり、海でデートしたり、ストーカーを撃退したり)剛司が、その時、どんな気持ちでいたのかを初めて知ることになり、恋模様の形勢は大逆転していきます。

でも、簡単には終わらせない邪魔者が現れましたね。脇役(ラスボス)の桜井和哉です。彼は、電車男を凌いでエルメスを自分のものにしようと企てます。ところが、難なくスルーされて返って二人を出会わせてしまうのも痛快でした。

クライマックスは、1回だとは限りません。3回だと、ちょっとくどいので、2回がベストだと思います。読者に「まだ、何かありそう・・」と期待や不安を抱かせるのも一つの手段でしょう。

関連記事:クライマックスの作り方

まとめ

この物語は、平たく言ってしまえば、オタク男子が好きな女の子のために頑張った記録で、いつになっても、色あせない名作だと思います。

当時、2ちゃんねるブームだったこともあり、「キタ━(゚∀゚)━!」や、「ダメぽ_| ̄|○」などのネットスラングなどの演出も重なり、ネット住民が一喜一憂するユニークな姿も見どころです。特に多くの引きこもり(オタク)にも希望や共感を与えてくれる作品として仕上がっています。ちなみに、『電車男』の演出として活躍した武内英樹さんは、映画『翔んで埼玉』でも監督を務めました。

恋愛には、試練がつきものです。『電車男』では、沙織の周囲にいる女性キャラや家族も主人公の敵となっていましたが、一番の敵が山田剛司自身であり、勇気を振り絞ってゴールに立ち向かう姿が描けていたと思います。

どんなジャンル(SF、時代物、ファンタジー)であっても、恋愛ドラマ要素があれば、ストーリーは自然と盛り上がります。ぜひ、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

あなたの創作を応援しています。

関連記事:恋愛ドラマの法則

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