ストーリー作品の分析①少林サッカー
アイデアの出し方とストーリー作りの創作理論だけでは、やっぱりイメージしにくいですよね。
そこで、このストーリー分析シリーズでは、ストーリー作りに役立つ、解説しやすい作品を、ボクの主観でピックアップしていきます。
第一回目は、こちら『少林サッカー』(2002年)
『少林サッカー』をご存知でしたら、ストーリーの骨組みの作り方の参考にしていただけたら嬉しいです。
【注意】まだ観ていなければ、ネタバレになりますので、申し訳ないですがご視聴していただいてから、この記事をお読みください。※どちらでも構いません。
目次
着想(アイデア)
少林拳(格闘)+サッカー+ラブコメ
当時は国内外、サッカーブームが巻き起こりました。この二つの要素を融合させたナイスなアイデア作品だと思います。
日本のギャグ漫画にもかなり影響を受けているそうです。映像作品なので、CGを使ったアクションシーンや、大げさなクラシックな曲で楽しめますが、何よりストーリーがわかりすく共感も得やすい構成になっています。
スリーベース
①誰?主人公のシン(少林拳の伝道師)
②何故?少林拳が最高だから世に広める
③どのように?サッカーチーム、デビルに勝つ
この3つが抑えられています。
関連記事:創作前の3つの決め事
プロット(メインストーリー)
①ファーストステージ(序盤)
主人公の日常(少林拳の啓蒙)が描かれている。太極拳で饅頭をつくるヒロインとの出会い。
②セカンドステージ(中盤)
元サッカー選手ファン監督との出会いサッカーを通して少林拳を伝えるアイデアが思い浮ぶ。そして少林拳を学んだ仲間たち(貧乏人のおっさんたち)を訪ねる。練習試合中、仲間が少林券の秘伝の技が覚醒し、少林サッカーチームが誕生。ワールドカップを目指して勝ち上がっていく。
③クライマックス(終盤)
中国最強チームデビルとの決勝戦
オープニングのフック(ツカミ)
ファン(少林チームの監督)が、まだ若かりし頃、八百長の小切手で不当たりを出し、ラスボスのファン(サッカー界のドン)によって、栄光の座を奪われるシーンから始まります。第二の主人公(ファン)がどん底からどのように這い上がるのか?と期待感を膨らませています。
関連記事:ストーリー作品としてのフック
ストーリーの分岐点(ターニングポイント)
この物語の3つの山場を克服していきます。
ファーストステージ→少林チームが集まらない→集まる
セカンドステージ→少林チームが覚醒しない→覚醒する
クライマックス→少林チームが決勝戦でピンチ→勝利する
リミット
少林チーム全員が落ちぶれ者ばかりで、お金もありませんし運動不足で、精神病を患っています。本来、少林拳が使えるのに、うまく発揮できない状態が続きます。
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ギャップ
オープニングから序盤のパートまで、うまくいかないことが続きますがチームがまとまっていきます。
セカンドステージ(中盤)に結成し立ての少林チームが、ルールをまったく守らない凶器をつかったり体当たりをする乱暴で怪しいチームによって、ボロボロにされます。
主人公のシンのお兄さんは「許してください」「あばらが折れたから病院へ行かせて下さい」と悪党にヘコヘコと頭を下げるシーンがあります。
すると悪党のリーダーは「うぜぇツラ見せんじゃねぇよ」「俺のパンツを頭にかぶったら病院へ行かせてやる」と言って、その場でパンツを脱いで渡します。
躊躇しつつも、パンツを頭にかぶり敗北するのでした。この負けっぷりの演出は、観ている方も情けなくなります。
その、情けなく弱々しいシーンを見せつけまくった後、チームは主人公を中心に少林拳を覚醒させ、強いチームに大変身します。
参考記事:インパクトの与え方
エンディング
サッカーで優勝することで、世の中が少林拳ブームが巻き起こり、ついに主人公シンの願いは叶います。
メインストーリー(幹)
主人公のシンが少林拳をサッカーを通して世に伝えるのが目的で、手段はサッカー
サブストーリー(枝)
①ファンとハンの対決
②シンとムイ(ヒロイン)の恋愛模様
主人公(作家の分身)という観点
チャウ・シンチー監督はブルースリーをこよなく愛する少林寺拳法マニアです。主人公のシンは、監督自ら主役も演じ、その情熱と魂を感じました。どんなに惨めでも夢をあきらめずにひらすら突き進む、ピュアで青春ストーリーだったと思います。
作品の全体と所感
少年漫画風のコミカルなギャグテイストで、魅力的なザコキャラが多いのが特徴でした。まじめな話というより、ギャグをメインにしたバトル設定です。
また、中国一美人俳優との異名を持つヴィッキーチャオをあえて、1度もまともな顔で演出させないというギャップの演出や、どう見ても運動音痴にしか見えないおっさんを覚醒させるシーンなど、見せ方も優れていると思いました。
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